財産の申告漏れ

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財産の申告漏れ

相続税申告において、税理士が本来申告すべき財産を見落として過少申告を行ったり、また勘案すべき債務を見落として過大申告を行ってしまうことがあります。

申告漏れにおける税理士の注意義務違反

税務申告の委任を受けた税理士は、基本的には委任者から提供された資料や委任者からの指示説明に依拠して申告書を作成しますが、委任者から提供された資料が不十分であったり、委任者の指示説明が不適切であるために、これに依拠して申告書を作成すると適正な税務申告がされないおそれがあるときは、委任者に対して追加の資料提供や調査を指示し、不充分な点や不適切な点を是正した上で税務申告を行う義務を負います。
このような注意義務に違反し、ただ漫然と依頼者からの事情聴取に基づいて申告書を作成し、申告漏れをしたような場合には、税理士に注意義務違反が認められ、税理士が責任を負うことがあります。

(1)積極財産の申告漏れ

被相続人の財産が多岐にわたる場合、相続財産を把握しきれず、本来申告すべき財産の申告を失念して過少申告を行ってしまうことがあります。

税務調査で申告すべき相続財産が指摘された場合には、当該財産についての不足分の相続税のほか、納付期限から実際の納付までの期間にわたる延滞税、過少申告加算税が課され、さらに納税者に事実の隠蔽等が認められた場合には、重加算税が課される場合があります。

担当税理士に申告漏れについての注意義務違反が認められる場合には、これらの加算税等について賠償責任を問うことができます。

海外資産の申告漏れについて税理士の注意義務違反を認めた事例

被相続人が海外に資産を保有していたにもかかわらず、担当税理士がこれを申告しなかった事例で、委任者の説明からは海外資産の存在が明らかでなかったものの、被相続人が相当な資産家であることや、かつて担当税理士が被相続人の所得税の確定申告の際に海外における医療費に関する資料を受け取った経験があること等に鑑みると、担当税理士は委任者たる相続人に対して海外資産の有無を問いただしたり、調査を求めるべき注意義務があったとして、担当税理士に加算税等の賠償責任を認めた判例があります。

(2)消極財産の申告漏れ

被相続人の財産関係が複雑な場合、被相続人の債権債務関係を把握しきれず、被相続人の債務を申告せずに過大申告を行ってしまうことがあります。債務の把握漏れについて税理士に注意義務違反が認められる場合、還付請求によっても回収できない過大申告分等の損害について、賠償責任を問うことができます。

借入金の申告漏れについて税理士の注意義務違反を認めた事例

税理士が被相続人の住宅金融公庫からの多額の借入金について考慮しないまま相続人間での遺産分割協議書を作成し、これに基づいて過大な相続税を申告した事例で、担当税理士が当該借入金を念頭において、配偶者控除をできる限り多く使えるような遺産分割協議案を提示していれば、被相続人の配偶者については相続額が減り、配偶者控除の特例を限度いっぱいに利用して相続税額を圧縮できたとして、担当税理士に注意義務違反に基づく賠償責任を認めた判例があります。

いつ、どのような資料を、誰に渡したか、確認しましょう

申告漏れの財産を示す資料が直接、担当税理士の手元になかったとしても、担当税理士の事務所の職員に資料が渡っていれば、担当税理士の注意義務違反を問うことができます。

相続税の申告漏れが問題となった事例で、被相続人の所得税の確定申告の際に、同事務所の公認会計士に被相続人の通帳が提出され、同通帳に申告漏れ財産の存在を示す記載があった場合、担当税理士の履行補助者たる公認会計士のもとに資料があったのであるから、担当税理士に注意義務違反を認めた判例があります。

申告漏れについて税理士の責任を問う場合には、相続税申告の依頼の際に提出した資料のみならず、被相続人がこれまで税理士事務所に提出した資料についても、よく見直すことが必要です。

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